ビジネスは常に前に進む力を必要とする。劇的なビジネス展開を望まず、変化を嫌う企業姿勢をモットーにしていても、維持継続には相応の企業努力は必要となる。なぜなら社会情勢などはマクロにもミクロにも日々変化し続け、企業も社会経済の中で活動する。いわば、常に様々な潮流や外的要因と対峙することで企業の体は構成される。

情勢や動向は多種多様であり、地域や業界によっても大きく異なってくるものであるが、2020年初頭から猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は世界規模で全方位に変容をもたらした。ビジネスにおける影響も著しく、事業規模や業種を問わず一様に難しい課題を突きつけられている。一方で近年のビジネス全般の潮流としては、デジタルトランスフォーメーション(DX)に代表されるように、よりダイナミックなデジタル活用がある。高度化かつ緻密化するデジタル活用は枚挙に暇がないが、広く紹介される事例の多くは、業界のトップランナー企業や大企業に占められている。潤沢な予算を有する大企業は、デジタルへの投資も容易であり、ビジネス規模の大きさから投資の回収もしやすいだろう。しかし、デジタルテクノロジーの進化は速く、価格や機能面に至るまでその間口は広くなっており、大企業の独壇場から中小企業がチャレンジするのもたやすく、ビジネス価値を高める存在となっている。そして日本国内事業者の99.7%は中小企業が占め、その定義は中小企業基本法にのっとり業種によって細分化されるが、定義に該当しない規模を大企業と見なしている。新型コロナウイルス感染症の影響によるビジネスダメージに対し、中小企業を対象とした資金繰り支援制度等が官民で展開される中においても、新型コロナとデジタルテクノロジーの潮流を見極めビジネスを前進させる視座は高めておくべきではないだろうか?

本書は、Salesforceによる中堅・中小企業に向けたトレンドレポートをお届けする。同レポートは、世界各国2,300人を越える中堅・中小企業(SMB)のオーナーやリーダーに対して展開されたアンケートに基づき、数値と分析を展開する。アンケート項目には新型コロナウイルスによる難局を対峙するSMBリーダーが個人的に抱える課題から、資金、デジタル化への取組など、把握の難しい現在の状況を適切に色濃く整理されている。また、巻末には国別の集計データ、CRMシステムを導入するメリットなど、まさに新型コロナとデジタルテクノロジーの両面を押さえる内容となっている。日本国内のは調査対象に含まれてはいないが、SMBがパンデミックの影響を受けている状況に違いはない。調査した企業規模は従業員数2~200名であり、一般的にイメージされる国内中小企業の事業規模と等しいのではないだろうか? 本書では調査結果を踏まえ、各国のSMBのリーダーたちを「いかなる困難に直面しようとも屈することなく、難局を乗り切ろうとしています」と評している。トレンドを把握するだけでなく、今を生きる多くのビジネスパーソンに事業規模や立場を越えてヒントとなり得る一冊といえる。ぜひともご一読をおすすめする。