業種業界問わず現代の企業活動にデジタル技術は欠かせない。かつては会計や在庫管理などの特定業務にスタンドアローン端末が活用され、データは特定のハードディスクに格納されていた。

 

今日、データ活用が全方位でビジネスを強化することはまごう事なき事実だ。そしてこれほどまでにデータ文化が醸成するにはテクノロジー進化に負うところが多かった。特にパブリッククラウドとモバイル端末は、設備投資を所有から利用へとパラダイムシフトを起こし、利用場所の制約から解放した。高度に進化したネットワーキングによって支えられるが構造の複雑化は免れず、データが価値を持つのと同時に経営資源を狙うサイバー攻撃が激しさを増している。セキュリティ対策を徹底する必要性は急騰するが、複雑さから全域を把握する事はむずかしく、加えて昨今のパンデミックによって需要拡大したテレワーク運用がさらに難度を上げている。多くの企業がデジタルトランスフォーメーションの潮流に活路を見出すものの、ビジネスの大前提となる快適さと安全性の確保は古今未曽有の難局に直面しているのではないだろうか。

 

本書「Secure Access Service Edge for dummies」は現代企業が採用するモダンネットワーキングの複雑さを背景とともに整理し、セキュリティ課題について解説する。セキュリティ要件の変化への対処としてリサーチ&アドバイザリ企業であるガートナーが提唱するSASE(Secure Access Service Edge)を推奨し、SASEの思想から構造、ユースケースに至るまで全65ページに渡り展開している。SASEはセキュリティのトレンドである「ゼロトラスト」についても内包しており、大局観に立つセキュリティ戦略を進めるものといえる。また本書はトピックに不慣れな読者にも威圧感のない学習書/参考書として海外で評価の高い「for dummies」シリーズの特別日本語版として編集されており、巻末には用語集を備え無理なく読み進められる構成を採っている。自社のセキュリティにおける“現状への理解”→“課題の認知”→“対処への方針”が導き出される内容となっており、CIOやセキュリティ担当者のみならず多くの企業人が今こそ読むべき一冊といえる。