今日の状況を見渡せば、ビジネスはいうにおよばず生活や社会システムも含め、世界規模で混沌としているといえる。新型コロナウイルスの感染拡大が与える影響は甚大で、あらゆる人の活動を制限している。

 

いかなる状況下であっても人類は生きていかねばならず、企業もまた然り。昨年の同時期には季節の変化によって終息に向かうと言う憶測もあったが、未だ猛威を振るい続け、一時的かと思われていたリモートワークは常態化しつつある。出口が見えない状況からネガティブな側面ばかりが目につくが、歴史に訪ねるならば1918年に端を発するスペイン風邪では、人々の衛生意識の変化から食品のセロハン包装が登場し、現代の食品包装を形成するに至っている。多数の人命に関わる側面は歓迎できる類ではないが、大きな変化が現在のノーマルを生み出してきた事実もある。ビジネスはいかなるときも目線を上げ戦略を立てて実行に移す力強さを要す。企業組織においては、変化を見据えたリーダーシップがさらに問われる時代の到来といえるのではないだろうか?

 

本書は、Splunkによる2021年の予測と戦略を開示する。コロナ禍の昨今は多種雑多な情報が飛び交い、正確な情報を精査するだけでも難度は高い。企業が自社の周囲を見渡すだけでは予測が立ちにくく、戦略から実行に至るスピードも鈍りがちだ。また安易な予測は将来に渡る企業生命に影を落とす可能性も秘めている。本書では同社がデータに基づき支援する数千以上の顧客への調査を精緻に分析するのみならず、世界に25以上のオフィスと4000人を超える従業員を有する企業体として対峙する自社課題とも合わせて多面的に予測を導き出している。「コロナ後の世界を予測する」「激動の時代のリーダー像」「デジタルトランスフォーメーション」のテーマを掲げ、さらに9項目に細分化して具体的なテクノロジー活用を、社会性から人的要素も交え展開する。「リモートワークを前提としたIT運用、セキュリティ対策」、「人材戦略がデジタルトランスフォーメーションを成功させる」といった予測は、不透明な世界を進もうとする企業にとっての羅針盤になるだろう。巻頭の同社CEOのコメントには「複雑な問題に対する正解はひとつではないこと、そして正解を見出すことは、これからなすべきことのほんの始まりに過ぎないということ」とあり、現代を生き抜くビジネスリーダーが果たすべき役割を象徴しているように思われる。信頼に足る予測であり、ビジネスの視座を養うためにも多くの企業人に広くご一読をおすすめできる内容となっている。