デジタルテクノロジーの進化と普及は、新たな価値を創造してきた。そして「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義されたデジタルトランスフォーメーション(DX)は、今や企業活動において取り組むべき火急の課題と位置づけられているのではないだろうか?
組織がDXを実現していくにあたり、クラウドやディープラーニングなど種々のテクノロジーと対峙することになる。その取り組みの中心には「ITチーム」の活躍が欠かせない。多くの開発や改善を迅速かつ適応的に実践する必要があり、ソフトウェア開発の現場では様々な開発手法が確立されてきた。各業界のトップランナー企業の多くは、アジャイル開発、DevOps(デブオプス)などの実践に積極的だ。各開発手法の詳細は割愛するが、いずれも「ITチーム」「組織改革」「考え方」などが重要なファクターとなる。つまりはソフトウエア開発から「ITチーム」~「IT組織」と伝播し、企業によるイノベーションへと至る。そして単なる開発手法にとどまらず、概念の範囲はより大きくなってきている。
本書は、ITサービスマネジメント(以下:ITSM)のガイドラインとして注目されるITIL 4(Information Technology Infrastructure Library 4)の解説とツール活用・実践方法を収録する。ITSMは“開発手法”の有用性を大局観をもって解釈し、サービスを効率的にまた円滑に提供するための管理を指し示す。ITILは、ITSMにおける成功事例書籍群(イギリス政府 1989年発表)に端を発している。ITIL 4(2019年発表)では、近年のテクノロジー進化・普及を鑑み、DX等への考慮も含めてブラッシュアップされている。ITSMを重視する企業は増加しており、企業競争力だけでなく「働き方改革」「BCP(事業継続計画)」など、外因においても揺るがない企業の“体幹”を育む効果が期待できるのではないだろうか? 時代の潮流に乗り遅れないためにも、IT組織のメンバーはもとよりマネジメント・経営層に至るまで、広くご一読をおすすめできる内容となっている。