近年、政府主導で働き方改革が進められ生産性向上と労働時間短縮、休暇余暇の充実などが提唱された結果、賛同して取り組む企業も多数であったが、具体的にサテライト・オフィス設置や在宅勤務まで踏み込む企業はごく僅かであった。
国内では、2020年初頭から新型コロナウイルスの拡散によって多くの変化が起こっており、現在もその渦中にある。2020年3月に成立した新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づき、発出された緊急事態宣言(2020年4月~5月)に前後し、急遽テレワークにシフトする企業が激増した。初回かつ緊急であったため、急ごしらえで運用ルールも定まらぬままにテレワークで業務を強行する企業も散見された。約1年弱経過し2回目の緊急事態宣言が発出された今、政府の求める「出勤者数7割削減」に対してテレワークを続行・強化する企業や部分出社を認めざるを得ない企業など対応は多種多様であり、さまざまな議論が絶えない。いずれもビジネスを止めない施策であり、業種や企業事情によってテレワーク範囲や強化度合に差違が生じるのは否めない。しかし、千変万化の現状を鑑みるならBCP(事業継続計画)と働き方改革の観点でテレワーク強化は欠かせないだろう。常態化していくテレワークにおいて、セキュリティ対策と運用ルールへの取り組みがますます重要視される。
本書は、テレワークにおけるセキュリティ対策の企業調査を開示する。サンプル数207におよぶ企業のテレワークの実態を「テレワークの実施状況」「テレワーク実施時のルールとセキュリティポリシー」「テレワーク実施時のセキュリティの状況」「テレワーク実施時のインターネット接続」「テレワーク実施時のセキュリティ対策」「インシデント発生時の体制」の6章に分け詳細に集計している。また、集計結果の分析とテレワーク実施時におけるセキュリティ推奨対策を展開する貴重な内容となっている。データソースは2020年3月25日~3月31日の調査期間であるが、傾向から導き出された推奨対策は指針として現在も価値を持つ。テレワークがかなり定着した今こそ本書を活用し、自社のテレワークの取り組みを振り返るとともに、推奨対策の達成度や今後の運用指針を摸索してみてはいかがだろうか。