昨今の消費動向はサブスクリプションの拡大に表れるように、所有よりも利用・活用が重視される傾向にある。企業においても、事物を所有することよりも活用できていることの方が圧倒的にビジネスに優位性を築いている。データを所有しているだけでは何も生み出すことがないことから、データ活用文化が高まったのもその顕著な変化といえるだろう。

 

企業のIT投資においても、いかに活用に貢献するか? ビジネスにどれほどの競争力を増加させるのか? が第一義となり、ハード、ソフト、人材に至るまで実現への環境整備の範疇といえる。今日、業種業界・事業規模を問わず盛んに行われているアプリ開発は、クラウドやコンテナなどの技術革新から開発環境が容易に整備できるようになった。現在の活用領域で俊敏性を実現するために、常に進化するサーバーやストレージなどのハードウェア群もキャッチアップすることも重要であるが、ビジネス視点でも競争の場となったデータ活用・アプリ開発も高度化の方向に動いていることを忘れてはならない。近視眼的で局所な環境改善では、ますます激化するであろう開発競争に強みは発揮されないだろう。開発環境整備には、未来志向で大局的な視点を必要とされる時期に差し掛かっている。

 

本書は、AI対応インフラストラクチャのAI研究開発現場における導入事例を紹介する。本書で取り上げるインフラストラクチャ「AIRI」は、NVIDIAとPure Storageの協業で開発され、NVIDIA、PureStorage、Arista Networksの技術を統合した業界初のフルスタックのAI対応インフラストラクチャである。導入先のオリンパス株式会社では、先進企業としてAI開発と活用にいち早く取り組んでいる。競争力強化を目的に大規模AI開発環境を摸索し、「AIRI」によって柔軟性と俊敏性を獲得するに至っている。AI開発に馴染みのない読者諸氏も多いことかと思われるが、データ活用がそうであったようにトップランナー企業が先兵として実践し、その後に大々的に拡がることがAI開発にも予測される。一般化したデータ活用・アプリ開発の近未来はAI開発がビジネスの主戦場となる日も近いかと思われる。本書の詳細をご一読いただき、来たるべき開発環境を備えてみてはいかがだろうか。