新型コロナウイルスの世界的な拡散以降、あらゆる物事は予想だにしない現実と流動的な動向に未だ翻弄されている。練り上げた事業計画に基づくビジネス展開にも亀裂が走っている。
製造業は多項のプロセスとの連携で緻密にバランスをとる必要があり、予測から導き出した計画を社内外に広く多く行きわたらせる。そのため予想のつかない昨今の状況は特に苦境に立たされる傾向が強い。元来、計画通りにプロセスが進行しているかをつぶさにモニタリングし、遅延や変更が生じれば各プロセスでの対応を常としてきた。大企業や歴史を持つ製造業者は、あまたの経験から得た予測能力も対応への引き出しも多い。しかし豊富な経験値をもってしても現在の状況ではビジネスを前進させるには難度が高く、慣れ親しんできたバリューチェーンは脆弱性とされ、変革すべきタイミングに差し掛かってきているのではないだろうか?
本書は、世界750人の製造業者のリーダーを対象に実施した調査をレポートする。Salesforce Industry Insightsが厳正な手法に則り広域に行った調査(Salesforceのユーザー外も含む)から、「将来対応能力」をテーマに現状をデータも挙げて分析するとともに、製造業界全体の新潮流を解析する。例えば、S&OP(販売・業務計画)システムを使用し従来型の予測手法を活用している大企業であっても業績が低下しているケースを指摘。今後10年間に向けた備えをする製造業者を「将来対応型」と定義し、そうでない企業と照らし合わせ、その実態をより深くレポートする。S&OPシステムの保有だけではもはや充分ではなく、デジタル化、俊敏性、顧客が企業の未来を拓く「将来対応型」へのカギとなっていることが明確となる内容となっている。翻弄される状況からの脱却を志すビジネスパーソンにご一読を強く推奨する。