新型コロナ感染症の拡散以降、世界は大きく変化している。日本国内は、他国と比較した混乱状況や人口あたりの感染率など軽重の比較よりも、自身のおかれている状況が最重要となり、ビジネスに至ってはこの2年間で多くの“ノーマル”が霧散した。
2020年4月当時を思い起こしていただきたい。緊急事態宣言をうけてテレワーク環境を急ごしらえで構築し、運用ルールも整わぬままに大半の社員は在宅ワークに切り替えたのではないだろうか。以前よりテレワーク環境を整備していた企業も存在したが、大規模なテレワーク利用を想定しておらず、滞りなく切り替えられたという企業はほぼ皆無かと思われる。デバイスの手配からエンドユーザー側へのサポートなど多岐に渡る領域でEUC(エンドユーザーコンピューティング)担当の機転と尽力があって出社率低減は実現されたといえる。そして、テレワークの運用が始まるとエンドポイントセキュリティの重要性が各所で説かれ“アフターコロナ”“ニューノーマル”を標榜したデジタルを礎とする働き方が問われるようになった。
しかし今現在も世界はコロナ禍にあり、終息していない。アフターどころか、毎日オフィスに出勤していた“ノーマル”の記憶さえも薄れてきている。変化は激しく、先が見えない状況下ではあるが、いま一度自社のエンドユーザーコンピューティング環境について現状を整理する必要を感じずにはいられない。本書「変化に俊敏に対応できるエンドユーザーコンピューティングの実現」は、EUC分野に長年携わるブライアン・マッデン氏(VMware社上級テクノロジスト)による状況変化の整理分析と今後のEUCに関する提言を収録する。同氏は働く側のインサイトにも触れ、テレワーク/オフィスワークの二者択一ではない現実的な側面、企業の実状を的確に指摘する。場所やデバイスを問わない安全なワークスペースの確保をEUCの大義とし「アジャイル」つまりは俊敏性の重要性を説く。実現には企業事情やコストが障壁となるが、クラウドとVDI(仮想デスクトップ基盤)の有用性についても簡潔に展開する。EUC担当者はもとより多くのビジネスパーソンにもご一読いただき、自社に適し変化に強いワークスペースへの契機とされることをおすすめする。