近年、イノベーションの必要性があらゆるシーンで強調されている。政策にも“~改革”の文字が頻繁に登場し、ドイツ連邦政府によるインダストリー4.0戦略などに代表されるとおり、世界規模でイノベーションが渇望されているといえよう。今日提唱されるイノベーションは、工業や金融など特定のビジネス範疇に留まらず、おおよそ人類が接するすべての領域を範疇とし、いずれも漏れなくデジタルテクノロジーが介在する特徴を有している。

 

イノベーションは停滞を回避し、先行きの不透明さに対しても有効な選択といえる。国内企業におけるイノベーションの重要性はDXとして広く認知されているが、個々の企業におけるDXの概念は様々ではないだろうか。在宅ワーク実施やBIツールの導入がDXと捉える企業もあれば、業務効率化を大義として各種施策に励む企業もあるだろう。企業DXは業界を問わずややフワッとしたイメージで進行している様にも見受けられる。DXはイノベーションに重要要素であり、イノベーションは“新基軸”“新結合”などと訳され、ゼロからの発明ではなく、狭義に捉えられたDXのみで完結する事柄ではない。

 

また巷では、経営学を出所とするAmbidexterityの和訳である“両利きの経営”という表現も増えている。詳細は割愛するが大意は企業経営における“知の深化”と“知の探求”両立に在る。イノベーションの源泉として自社業務の効率化や業界・競合の動向などをキャッチアップする“深化”のみならず、他の業界や社会動向からも手法などを吸収する“探求”の両立が説かれているともいえる。本紙は「DIGITAL X」と「IT Leaders」のコンテンツから“デジタルツイン”“AI”“DX”をキーワードに必読記事を抜粋・再編集した特別編集号である。都市構想の国家プロジェクトから企業ガバナンスにおけるDXに至るまで、有識者の見解や多種多様な業界の先進事例を交え、全24ページのボリュームでお届けする。マクロにもミクロにも展開される内容は、深化と探求の一助となる内容となっている。変化の激しさにも生き残る企業経営層のみならず、業務内容を問わず多くのビジネスパーソンにも本紙のご一読を強くおすすめする。