近年、DXや企業改革など企業の進化を提唱する論調が各所から挙がっている。停滞している国内経済や国際競争力の危機感などから湧き起こったものであり、いずれもデジタルの存在なくして語られることは皆無である。読者諸氏の企業の3年前、5年前と比較した、現在までの進化のほどを是非振り返っていただきたい。過去の企業姿勢が今現在を形成していると言えるだろう。

この一連のデジタル変革の潮流に対する企業の取り組みは現実的には様々であり、社内プロセスを精査し、組織だって綿密な戦略を打ち立てた企業や、ITインフラ整備やBIやCRMツール導入などに注力した企業もあるだろう。効果の大小は事情によって異なるものの、企業とビジネスを前進させる取り組みであることは明白だ。しかしながら昨今の世界情勢を鑑みると、コロナ禍、紛争、エネルギーなど枚挙に暇がないほどの問題が噴出しており、しかも終息点も見いだせぬままに未だ流動し続けている。Volatility（変動性）、Uncertainty（不確実性）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性）が入り交じったVUCAの時代に突入した今日、企業は過去に打ち立てた戦略も実績も通用しないフェーズと対峙しているのではないだろうか？

本書は「IT Leaders」より、“今読むべき”内容を抜粋・再編集した特別編集号である。「VUCAの時代を勝ち抜く！デジタルリーダーの戦略と実践」と題し、業種業界の異なる3社3人のデジタルリーダーへの取材記事を収録する。DX/サプライチェーン変革/CIOの役割の三部で展開され、今日のデジタル変革に挑む企業の内部事情から戦略、実践に至るまでも詳らかに語られる鮮烈な内容となっている。デジタル変革・DXと一言で片付けるのは容易いが、実践には法則もなく成功への全能な方程式も存在しない。本書に登場する3氏には、危機感と大局観をもって企業の継続性を見据える確かな思考が存在する。組織、人、外因を含め戦略を立て手段としてデジタル変革を推進する、まさに現代ビジネスの本質と言えよう。物事は絶えず流れ変わるのが常だが、今の変化はあまりにも激しい。VUCAの時代を生きるビジネスパーソンに是非ご一読いただきたい一冊となっている。