あらゆる社会はコミュケーションによって成立し、企業組織とはまさにコミュケーションの集合体と言えよう。リアルでの対面、電話による音声、紙文書、メール、Webサイトなど、人的/非人的含め内外のあらゆるコミュニケーションの巧拙が業務を左右し、その積み重ねが企業力として顕在化しているのではないだろうか。

 

確実性が求められるサービスや製造などのシーンでは、マニュアルを作成し配布・閲覧することで品質を確保する手法が定着している。今日の企業活動のコミュニケーションツールであるITデバイスでも、設定や用法からトラブルシュートにいたるまでマニュアルの活用が標準的だ。しかし、インシデント、状況や個々のITリテラシー多寡などの要素も多く、マニュアルだけですべてをフォローすることは現実的に不可能といえる。そのため人的なサポートで補完するヘルプデスクが活用されるが、テレワークが急増した昨今において、ITデバイスが業務の基盤となるだけにヘルプデスクに寄せられる質問の電話とメール対応でパンク寸前な組織が散見される。

 

オフィス外で業務にあたるユーザー視点ではヘルプデスクが唯一の命綱ともなるが、ヘルプデスク側からすれば同種の質問への回答の繰り返しに忙殺されているケースも存在する。本書は、組織で実践されるナレッジ(知識・情報)管理の現状と課題を繙くとともに、効果的な活用について解説する。ITサービスマネジメントツール「ServiceDesk Plus」を俎上に載せ、ヘルプデスク内部のナレッジ管理力向上だけでなく、活用範囲拡大する質問者の自己解決、ファインダビリティ充実など5つの活用術について展開する。企業におけるコミュニケーション向上を目指すならば、人的ではない仕組みが欠かせないだろう。本書の内容はヘルプデスクに限らず多くのビジネスシーンでも応用できる可能性をもっており、ご一読の上、自社のナレッジ管理について考察されることをおすすめする。