クラウドは登場以来、企業のビジネスから組織のあり方に至るまで多くの物事を刷新してきた。コスト面で優位性があることから、システム構築にクラウドの利用を優先する“クラウドファースト”が提唱され、オンプレミスからの置き換えが進んできた。現在ではクラウドならではの利点を徹底して活用する“クラウドネイティブ”へとシフトしている。

 

近年のCOVID-19によるパンデミックは世界に多くの制約を強い、新たな変化を要求した。コロナ禍以前より国内でも始動した企業DXは“デジタル化”と“生産性”の裾野が広がり、実装は加速された。同様にクラウド利用も業種業界問わず急速に拡大している。しかし現実のアプローチと成果には差違が生じ、クラウドに掛ける費用、人的リソースなど要因は様々だが、セキュリティ、コンプライアンス、技術的な複雑さという課題にいずれの企業も直面している。クラウドネイティブ文化は現在進行形で、手本となる完成形は存在しておらず、戦略の正しさばかりか自社の現在地の判定すら難しい。それでも深く広くビジネスに浸透していくクラウドに、いかに取り組むかは社運を左右する命題と言えるだろう。

 

本書「クラウドネイティブ セキュリティ 最新情勢レポート2022年版」では、クラウド導入の戦略、予算、経験、計画に関する調査を実施し、世界中の企業3,000超の回答に基づいた、クラウド拡張を成功に導く道を分析する。クラウドセキュリティの取り組みが企業の成果に差違を生じさせることに注目し、クラウドセキュリティによって事業が妨げられている度合いを「セキュリティ摩擦」と定義する。また、クラウドの使用量、変革の目的、運用の戦略といった特性を基にパターンを見いだし、企業を「着実な導入」「急速な拡大(導入に苦労/導入に成功)」「定着済み」の3グループに分類し、支出、アーキテクチャ、DevSecOps統合レベルなど他項にわたり、グラフと共に精緻な比較と分析を展開する。クラウドの実態を映すばかりか、各グループの条件も明文化されておりクラウド移行における羅針盤的な内容と言えるだろう。企業人必読の一冊として本書を推奨する。