工業製品は数あれど、自動車の存在感は今なお抜きんでていると言ってよいだろう。単価、周辺部品産業の規模、そして流通から娯楽までありとあらゆる領域で車が使われているという現実。「クルマ」あってこそ、現代の生活は成り立っている。
一方で、自動車産業が激動期を迎えているのも確かだ。地球温暖化を抑止するためのCO2削減、石油一辺倒からの脱却という意味で、クルマの“電動化”は世界的なムーブメントとなった。
では、電動化を具体的にはどう進めるのか。その手段を巡っては、メーカーはもちろん、世界各国の政府・組織も巻き込んでの政治的綱引きが行われている。1年後、5年後、10年後を正確に予測することは、もはや誰にも無理だろう。そこで今回は、本命とみられるBEVの話題を軸に、各種の調査レポート・資料などを網羅的に集めた。電動化を議論する上での視野を広げるための材料として、ぜひご活用いただきたい。
なお本書では、ガソリン類を消費せず、バッテリーとモーターで動作する車両を「BEV」と呼称する。このほか、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせた、いわゆるハイブリッド車については「HV」、HVかつ電源プラグからの充電でも動作する方式は「PHV」とした。「EV」は動力の一部ないし全部に電力を用いるBEV、HV、PHVなどをまとめた総称として扱った。