生成AIの登場をきっかけに、AIは一部の専門家のものから、誰もが日常的に使う身近な道具へと爆発的に広がっている。文章の作成や情報収集、画像の生成まで、その活用範囲は日々拡大しており、「そろばんが電卓に」「手紙がメールに」変わったとき以上の変化が、いま社会全体で起きている。

 

当然に企業においても、AIは業務効率化や顧客対応の精緻化を実現する手段として期待を集め、活用領域は拡大し続けている。近年では、指示を待つだけでなく自ら計画を立てて行動する「AIエージェント」の業務実装も始まり、すでに投資対効果の手応えを実感する先進企業も出現している。一方で、もっともらしい誤情報を出力する「ハルシネーション」や、個人向けAIサービスへの入力を通じた機密情報の漏洩など、業務で使うからこそ無視できない課題も明らかになってきた。AIの力を十分に引き出せるかどうかは、こうした特性を正しく理解したうえで使えるかにかかっているといえるのではないだろうか。

 

本書『AIに"できること"と"任せられないこと"』は、AIの特性を基礎から明らかにし、生成AIを業務で使いこなすために押さえておくべきポイントを解説する。前半では、前提となる「AI」と「生成AI」の違いを明確にし、社内データをAIに活かすためのファインチューニングとグラウンディング、LLMの弱点を補うRAGの仕組み、そしてAIエージェントが自律的に動く仕組を、図解や身近な例を交えて整理する。とくに、AIの対応の質を大きく左右する「コンテキスト(背景情報)」の思考法は、活用を推進するうえで欠かせない視点だ。後半では、「AIにも苦手なことがある」「AIは忖度してくれない」「ハルシネーションに注意」「個人向けAIにお喋りし過ぎない」という4つの留意点を、実際の生成結果や事例とともに紹介し、後端ではAIを使いこなすための「心得三箇条」として明文化している。本書は、専門知識を要せずに短時間で読み通せる構成を採っており、自身とAIの関わり方を整理するだけでなく、社員の認識を揃えるための共通資料としても活用できる内容となっている。