
ITは誕生以来、インフラの整備と相応して社会的な浸透は凄まじく、ビジネス領域ではそれ以上の早さをもって活用されてきた。近年では、AIの登場が注目され、AIは一部門の業務効率化ツールから、企業の競争力そのものを左右する経営テーマへと位置付けを変えつつある。国内でも約9割の経営層がAIの重要性を認識しており、AIを前提とした事業や業務のあり方をどう描くかが、企業にとって避けて通れない課題となっている。
一方で、投資に見合う成果を実感できている企業はあまり見受けられない状況にある。グローバル調査では、AI投資のROIを明確に示せると確信する経営幹部はわずか6%にとどまり、AIを含むデジタルツールが定着しないことによる時間的損失は、従業員1人あたり年間51日に達するとの結果も出ている。国内に目を向ければ、CAIO(最高AI責任者)を設置している企業は4%にすぎず、AI推進の責任体制やガバナンスの整備はまだまだ途上にある。“導入はしたが全社に広がらない”“現場で使われ続けない”などの「手探り」の状態から如何に脱却するかが、いま問われているのではないだろうか。
本書「IT Leaders × DIGITAL X 特別編集号 2026 Autumn」は、インプレスのWebメディア「IT Leaders」と「DIGITAL X」の注目記事を抜粋・再編集し、AI変革の“いま”を多角的に解説する。本書では、先進企業のリーダーによる戦略と実践、最新調査に基づく現状分析、専門家による提言を一つにまとめることで、日々の記事を個別に追うだけでは見えにくい、成果を上げる企業に共通する条件を浮かび上がらせる。また、業種や規模の異なる取り組みも多数収録されており、横断的に読み比べることで、自社のAI活用の“現在地”把握と“つまずき”が客観的に確認できる展開を採る。そのうえで、推進体制や人材育成、ガバナンス、組織風土といった論点のうち、いま優先して手を打つべきものは何かを考察する手がかりが得られる興味深い内容となっている。AI変革は特定の部門だけで完結するものではなく、経営層とITリーダー、そして現場が同じ方向を向いてこそ前進する。本書を社内の議論を始めるための共通の土台として、ぜひ役立てていただきたい。AI活用に「確かな成果」を求む、企業人に広くご一読をおすすめする。
