近年、世界は大きく変化しており、スピードだけでなく変化の幅も大きく潮流をつかむ事すら難しい。製造業においては、殊更に変化も激しくサプライチェーンの分断、高騰するエネルギーコスト、AIなどの技術革新、そしてサステナビリティへのプレッシャーといった複雑な課題が同時に襲いかかる中、まさに業界全体が転換点を迎えている。対峙する項目と課題は多項に及ぶが、言い換えれば収益性の向上、新市場への参入、そして顧客ロイヤルティの強化といった成長のチャンスと捉えることもできるだろう。競合優位性を確立する実践には、入念な分析・検討、綿密な計画を要するものの、巷で散見される肝心の情報はミクロ的であったり信憑性に乏しいものも少なくない。

 

本書「製造業界のトレンド」は、全世界830人の製造業界の意思決定者を対象にSalesforceが実施した最新の調査レポートとなる。10の地域で展開された調査は経営観点はもちろん、カスタマーサービス、マーケティング、営業などおおよそ企業を構成する部門を網羅しており、6つの項目でデータに基づく図表とともに適確な分析を収録する。調査を通じ、AIやデータ駆動型テクノロジーがどのように業務変革を推進しているのかを明らかにしており、また営業とマーケティングの再構築、チャネルパートナーとの協力強化、そしてアフターマーケット戦略の見直しが、収益性や効率性を飛躍的に向上させる鍵であることが示される。特に85%のリーダーが業務変革の必要性を認識しつつも、収益目標を達成できた企業が38%にとどまるという、直視すべき過酷な現実をも可視化される貴重な内容となっている。


これからの製造業をリードするためには、単なる技術導入や短期的な利益改善ではなく、持続可能な成長を目指した包括的な戦略が必要となるだろう。脱炭素化、オンショアリング・ニアショアリングといったトレンドなど、多岐にわたるテーマをもカバーする本書をぜひご一読いただき、自社の現状と比較することで競争力を高めるための指針を獲得されることを推奨する。