日本の製造業は今、大きな転換点に立たされている。人手不足の深刻化、加えて価格競争の激化、原材料費の高騰など、先行き不透明な要素が難局をさらに加速させる。現場はフル稼働しているにもかかわらず、利益が思うように残らない状況も散見される。これまで競争力の源泉だった品質や現場改善も、顧客ニーズの多様化と変化のスピードの前では、十分な差別化要因になりにくくなっている。製造業には“作る力”そのものでだけでなく、その力をどう顧客価値と利益につなげるかという、経営の再設計が求められているのではないだろうか。

 

しかし、多くの中堅・中小製造業では、経営判断に必要な情報が実は経営層の手元に揃ってはいない。どの顧客が将来の収益を支えるのか?どの取引が静かに縮小しているのか?どの案件がリスクを抱えているのか? それら情報は感覚や断片的な報告に依存したままに、重要な意思決定が行われている。売上や受注残は見えていても、その裏にある“顧客との関係性”や“継続性”“依存リスク”までは可視化されていないケースも少なくはない。結果、気づいた時には主力顧客の発注は減少し、価格競争に巻き込まれ利益率が低下するなどの事態が静かに進行する。さらに事態をより深刻にするのは、顧客情報と対応履歴が個人や部門に閉じたまま属人化し、キーマンの異動・退職とともに経営の前提そのものが崩れるリスクを増大させる。

 

人手不足が常態化する中で、前述のリスクは小手先の現場改善の範疇では収まらず、製造業経営の持続性そのものが問われる課題だ。本書「CRM入門ガイド決定版」は、製造業に特化してCRM(顧客関係管理)を単なる営業支援ツールやIT施策としてではなく、経営を支える情報基盤として再定義する。顧客ごとの取引履歴、提案内容、クレームや設計変更の背景、保守・メンテナンス情報といった断片的な情報をつなげ、営業・設計・製造・保守・経営が同じ顧客像を共有することで、意思決定の質とスピードを高めていく。本書は、あるべき考え方を示し、その実践ステップを製造業の業務プロセスに即して整理する。経営層はもとより、すべての製造業関係者が次の一手を考える実践的ガイドとして、本書を“今読むべき書”として強く推奨する。