現在、社会のありかたが大きく変容しつつあり、ライフスタイルから、企業組織や営業のありかたまでも摸索していかなければならない状況である。ビジネスを展開する上で顧客との関係は何よりも重要であることは普遍的事実だが、いかに関係を維持・向上させていくかについては、今まで以上に大きな課題となってきている。

一方で働き方改革のように内部に向けた改善も求められる。ひと昔前であれば、スタープレイヤーや力技で企業業務を成り立たせてきた側面があるかもしれないが、属人と筋肉では組織全体としての生産性向上は望めず、組織の多くはIT活用に着目し、グループウェア等の導入に積極的である。しかし従来型で自由度の貧しいグループウェアでは固定された業務項目を基として、実業務をムリクリに当てはめていくような使い方が多く、改革を推進させることは難しい。改革が思うように進まない組織が陥りがちな迷宮でもある。

本書は、中堅中小の不動産会社が顧客ロイヤリティ維持・向上に留まらず企業改革をも大きく前進させた事例を紹介する。通常不動産は一般消費財等と比較し、取引額は高額であるものの、いち顧客の取引頻度は低く、リピートに対する業界意識も低いものと思われる。しかし本書で紹介する同社は地域密着の不動産業である利点を活かすべく、顧客生涯価値(LTV)を重視する「生涯リピート率100%」を目標として掲げてきた。実現には顧客の属性・相関関係をSalesforceによって可視化・共有を徹底する。これにより生産性・収益の向上だけでなく、属人性の排除から業界としては珍しい「完全週休2日制」をも成し遂げている。明確な目的意識と優れたエコシステムが合わされば、企業規模やITリテラシーの程度に関わらず改革を実現できる時代へと突入しているのである。経営層から全体へと広がる高い意識と統率が、組織を大きく前進させた好事例といえる。