何事においても自己分析は成長に欠かせず、企業で業績悪化が重大アラートとなって表面化したなら、対応は遅きに失したと認識すべきである。いかなる状況下でも事業の維持継続は至上命題であり、さらに成長をも目指す必要がある。また業績悪化の時点で責任・要因を社員に求めたところで現状の打開にはならない。事業規模の大小にかかわらず、企業という共同体は部門等の都合の大枠で物事を捉える傾向が強く、社員は直面する事柄のみを思慮し狭い視野になりがちになる。些細な躓きや非効率を見過ごすことも実に多いので、日頃から経営層のみならず自社分析の視点が肝要になる。

ビジネスであれば当然顧客が存在し、顧客ニーズを把握し的確に応える必要がある。しかし窓口となる社員のみが把握している場合が多く、営業日報などで直上司は把握するものの顧客の真意が社内で共有されず、特定社員の“ブラックボックス”に吸い込まれてしまう。toB/toCにかかわらずていねいな顧客のメンテナンスとニーズの掘り起こしは関係の継続を生み、優良顧客と長期の取引は業種業界問わずすべての企業が欲するところである。足りないのは社員のスキルではなく仕組みであり、顧客を軸にした社内の情報共有が機会損失と非効率を回避し、社員が的確にアクションを起こすことで生産性の向上も期待できるはずだ。

本書は、課題を見出した企業がSalesforce導入を発端とする業務改革の成功事例をレポートする。主題となる企業は、複合機関連ビジネスを中核とするが、業務効率と生産性を向上に各種ツールの導入施策は行ったものの機会損失は改善されず、Salesforce導入による改革に活路を見出した。改革は当初の課題のみならず全域に拡大させ、自社の知見を踏まえ新たにセールスフォース・ドットコムのコンサルティングパートナーの業務をも開始するにいたる。同社代表の「企業の淘汰がどんどん進んでいる状況でも、弊社のお客様さえ生き残ってくだされば、弊社も生きていける」という言葉に象徴されるとおり、顧客を軸にした巨視的視点と課題を見過ごさない仕組みが企業を躍進させる。すべての源泉は社内分析から生じるのではないだろうか? 気づきも多く非常に力強い内容となっているので、多くのビジネスパーソンに本書のご一読をおすすめする。