消費者の購買行動は常に変化しており、求める商品を扱う店舗に出向き、陳列商品から購入候補をあげ、店舗で悩んで選ぶことが少なくなってきている。そして自宅などで情報を集め、比較検証の上でスマホやタブレット端末を使って買い物をする光景もあたりまえとなってきている。価格のみならず物理的移動をも含めて無駄がなく、賢く、的確で省力な購買行動へと進化してきているといえ、当然デジタルテクノロジーの普及と浸透が契機となってはいるが、売り手側も潮流に応じた結果、書籍・音楽から始まり、業種業界問わず多くの消費財で展開されている。

2020年に入り、新型コロナウィルスの世界的な拡散は、生活だけでなく購買行動をも変化させた。対面接触を極力避ける行動原則によって消費材はより一層のデジタル販売と消費領域を加速している。また高額ゆえに対面での接客販売を主にする耐久消費財を扱う企業も命脈を保つべく、新たな取り組みが必要とされているのではないだろうか? 耐久消費財には不動産や家具なども含まれるが、コロナ禍以前から「売れない時代」と指摘される自動車業界にはブレーキがより強く踏み込まれるかたちとなり、全国各地に点在するディーラーは存続の危機を感じている。

本書は、自動車業界の現状を分析するとともに顧客体験と顧客満足を高める施策を提言する。同業界ではデジタルテクノロジーの進化に敏感に反応し、「クルマの買い方」や「顧客との付き合い方」について多くの労力を割いてきた。また、コロナ禍の接客接点の補完としてディーラーがリモートで顧客にクルマを提案する取り組みも実施している。しかしそれらの対応をもってしても十分ではないと本書は指摘する。クルマに対する消費者心理は「モノからコトへのパラダイムシフト」にあり、より高いサービスの質に重要性を見出すことができる。自動車業界、耐久消費財メーカーに限らず、顧客との長期の関係を築く上でも多くのヒントが展開されている。ぜひご一読いただき、ニューノーマル時代の顧客満足を追求していただきたい。