ビジネスでは“つながり”は重要な意味を持つ。以前は企業にとって株主の利益の最大化が最重要視される「株主資本主義」が主流であったが、2020年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では「ステークホルダー資本主義」が主題に据えられように、今日の資本主義は世界規模で転換期を迎え、最も重視すべき関係先は明らかに変化してきている。

デジタル化に軸足を置き、顧客との関係に対する施策が各所で展開されてきた。しかし、2020年は新型コロナウイルスに端を発する一連の危機が進行する中、社会・生活におけるあらゆる側面がその影響を受けており、根本的に変わりつつある。予測不能で獰猛たる要素が加わったことで、顧客とのつながりの重要さはさらに上がっているが、関係向上や信頼強化・再構築に向けた行動針路を示すコンパスは無きものとなってしまった。業務から望む情景はぼやけ、針路を定めるには心許ない。そこで自社業務の枠を越えた広い視野をもって顧客の動向を知る必要があるのではないだろうか?

本書は、「コネクテッドカスタマーの最新事情」と題し、2020年における顧客の期待と行動における急激な変化をレポートする。レポートはSalesforce社によって、6地域27 か国の法人顧客調査3,600人、一般消費者12,000人を対象に2020年7月16日~8月18日の期間で、二重盲検法により実施した調査データを基にしている。顧客が企業・ブランドに寄せる期待を主として、「つながり」「差別化」「デジタル変革」「ブランドの価値観表明」の4つの柱でデータを掲げつつ多角的な分析を展開する。さらに、顧客にとって業界のセクター間の境界が曖昧になってきていることを指摘し、今後の展望として「顧客の評価が高いセクターと低いセクター」のデータも併記する。全43ページにもおよび、顧客の実態を掴む貴重な内容となっている。顧客は人であり、企業も人で動く。針路を目極めるためにも、ご一読を強く推奨する。