現代におけるデジタル技術の進歩と普及は凄まじく、あらゆる方面でものごとを変革してきた。IT黎明期のビジネス領域においては先進企業の間で限定的に活用されていたが、コモディティ化とメリットから今日のビジネスに欠かせない重要性を持つ。
未だ発展と成長を続けるデジタル技術であるが、企業における近年の最大のトピックはクラウド活用にあるのではないだろうか? 運用効率の向上やコストの低減も企業に歓迎される一因でもあるが、クラウドの持つ俊敏さとフレキシブルさが多くの企業に主軸を与えとデジタル化を加速させているといえる。読者諸氏もご承知のとおり、既存のワークロードをクラウドに単純に移管すれば活用が達せられるわけではない。安定と連携を目的として最新のアーキテクチャを取り入れることで、従来以上の価値を企業にもたらす。しかしクラウドネイティブに向けた取り組みを深めていくにしたがい、管理すべきデータ量は増大し、複数のアーキテクチャが絡み合うことで複雑化も増す。一例を挙げれば、チーム開発に多くのメリットをもたらすマイクロサービス化であっても可観測性(オブザーバビリティ)は下がることとなる。そのためインシデント発生時のトラブルシューティングに多くの時間を要する事例は後を絶たない。活用は安定が担保されて初めて成立する事柄であり、クラウド安定を司るべき運用に課題が見えてくるのではないだろうか?
本書は、クラウド環境のリアルタイムな可視化と監視についてレポートする。前述のとおり、運用はクラウド活用の鬼門と捉える向きもあるが、そもそも運用が成立しない技術であったならば、各業界のトップランナー企業がクラウドネイティブになり得ないだろう。運用にある種の爆弾を抱えつつクラウド活用を推進する企業の多くは、監視アプローチの誤りに気づいていない。本書ではAWSを俎上に載せ、オンプレミスとの特性の違いを指摘し、オンプレミスを前提とした監視ツールや監視戦略の非対応さを強調する。具体的な施策としてSplunk社のクラウドに特化するソリューション群を機能を交えて紹介する。旧来のアプローチを捨て去ることで、クラウドの可能性は更に飛躍するといえる。AWSユーザー企業は必読の内容であり、デジタル化にビジネスメリットを求むビジネスパーソンにもご一読を強くおすすめする。