成長企業の裏には必ずといっていいほどテクノロジーの貢献が存在する。製造業などであれば当然のことだが、サービス業や小売業にもテクノロジーは深く関わっており、テクノロジーにおけるデジタルの比率は一様に高い。

 

いつの時代もテクノロジーは進化を好み停滞を嫌う。また1700年代に起きた第一次産業革命が示すとおり、ビジネスがテクノロジーを進化させ、テクノロジーがビジネスを躍進させた関係が認識される。今日、拡大するデジタルテクノロジーにおいては進化のスピードはさらに速く、製品ばかりか新たな概念もあまた出現している。ビジネスにおける投資は成長と利益の足場を築き企業を前進させ、またテクノロジースタックの選択が重要だが、最新や新規のテクノロジーの採用が自社にとって最善の投資となるわけではない。特にスタートアップ企業ともなれば、予算や人的リソースにも限りがあり、投資と経営とのバランスが悩ましい。成功が約束される教科書は存在せず、商機を掴む判断を担う技術リーダーの行動が問われているのではないだろうか。

 

本書は「後悔しないテクノロジースタック選び」と題し、スタートアップ企業を主題に技術リーダーに求められる行動について探求する。著者Rob Zuber(CircleCI CTO) の知見と急成長を遂げるスタートアップ企業を数多く目撃した経験に基づき、プレッシャーとストレスにさらされる技術リーダーの視座と戦略のヒントを紹介する。原則を「重要なことに精力を傾け、そうでないことに労力を浪費しないようにする」と位置づけ、「今は高価でも、後になれば安くなる輝かしいテクノロジーに背を向けよ」などのインパクトのあるテーマについて解説し、14のヒントを提示する。後段では「後になれば高くつく、早期に決めておくべきこととは」とも展開され、一見矛盾するようにも見られるが、企業人が社内で対峙する混沌とした状況を明確にを捉え、現実に寄りそった内容となっている。CI/CD文化を牽引する賢者の言はわかりやすく、あらゆる企業で活きるヒントとなることだろう。技術リーダーに限らず、すべての企業人が今こそ読むべき一冊といえる。