長らくハードウェア製品の販売を主軸としてきた製造業は、大きな変革期を迎えている。ハードウェア自体による差別化が困難となり、製品に実装されるソフトウェアが競争力を生み出す源泉となったためだ。
例えば、製品にセンサーを仕込んで予防保守サービスとともに提供する。また、ハードウェアをグローバルで共通化してコストを削減し、国別・地域別のローカライズはソフトウェアで行う。あるいは、専用アプリを配信してスマートフォンから遠隔操作可能にする。今やソフトウェアのパワーを活用しなければ、高度化する顧客のニーズに応えられなくなってきているのだ。
では、製造業におけるソフトウェア開発の重要性が増していく中、いかにして開発の効率化と品質の向上を実現していけばよいのか。従来からの「組み込みソフトウェア」のアプローチ――ハードウェア開発とソフトウェア開発を別々に行い、最後に統合テストを行う――では対応しきれないことは明らかだ。もし、統合テストで不具合が発覚した場合、大きな手戻りが発生し、リリース・スケジュールに影響を及ぼす恐れが高くなってしまう。
ソフトウェア開発を効率化し、より確実な開発プロセスを確立する。そして製品リリース後の機能強化も可能にする。そうした課題に応えるものが、継続的インテグレーション・継続的デリバリーと呼ばれる「CI/CD」である。本書では、ソフトウェア開発において製造業がとるべきアプローチとCI/CDの導入メリットについて解説する。ソフトウェアのパワーを自社のビジネスに取り込むために何をなすべきか。それを検討するための入り口として本書をお役立ていただきたい。