ビジネスとITの関係は、月日を重ねるごとに深くなってきた。業務効率化から実利益を生み出す様々なシーンでITの介在なくして今日のビジネスは成立しない。
ITのビジネス利用が深度を増す一方で、サイバー攻撃は攻勢を強め、さらに機密情報や個人情報の漏洩に代表されるリスクは右肩上がりに増加してきた。企業は常にオフィスの内外からの情報リスクに曝されており、故にPCへのセキュリティ対策は必須であり常識ともなっている。屋外での通信インフラの充実とともに、営業職などビジネスパーソンのオフィス外でのノートPC利用率が上がっているが、オフィス内で運用された対策やルールをその延長線上で強化し、企業の安全を担保してきた。そして携帯電話の技術進歩は凄まじく、大半はスマートフォンに取って代わられた。一昔前であればPCを必要とする業務作業も、各種ビジネススイートのモバイル対応やクラウドの充実から、多くはスマートフォンで完結できるようになっている。利便性・携行性の高いスマートフォンやタブレットの台頭は、ビジネスシーンでも大いに活用されているが、情報セキュリティや運用管理についてはノートPCと同様にはいかない現実がある。OSの違いだけでなく、身近で小型であることから実機の紛失という最大のリスクが伴っている。読者諸氏の企業で支給されるスマートフォン等のデバイスは紛失等をも想定した万全のセキュリティの上で運用されているだろうか?
本書は、モバイルデバイス管理(MDM)について重要性と課題を解説するとともに、MDMサービス「SPPM」の具体的な機能について触れている。世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響から、企業のテレワーク導入は一気に加速し、従業員が持つ業務スマホや業務PCの企業主導の管理は難しくなってきている。ある意味、従業員個人に管理を委ねており、情報セキュリティからも内部統制の観点からも望ましい状況とはいえないだろう。出社を前提とした以前の状況下であれば、ルールの徹底もむずかしくなく、定期的なセキュリティアップデート等の実施も可能であった。そのためセキュリティの観点からは本来はNGであるが、PCほど強固なセキュリティ対策を施されないスマホでも、何事も起こらずにすんでいた。しかしテレワーク全盛の今日において、今までは運が良かっただけだと断じられるべきだろう。コロナ禍に限らず新しい働き方が摸索される昨今、企業責任として本書をご一読いただき、ぜひともMDMへの理解を深めていただきたい