企業力を競争力に変換する要素は、事業規模・製品よりもITに移りつつある。効率的なITインフラ構築からアプリ開発まで、社内完結やパートナー企業の協力の下にIT関連業に限らず多くの企業で実践されている。生産性の向上と顧客に向けたサービス向上を主として、ITチームが日夜努力を重ねていることであろう。

 

ITチームの力が企業競争力の源泉ともいえる重要性を帯びてきており、優秀な人材の確保が経営の課題であることもうなづける。しかし、どれほど優秀な人材を確保しようとも、ITチームの生産性が戦略的業務に注力されなければ競争力は向上しないだろう。昨今の企業ITの潮流を見渡すとリモートワークの導入と充実が際立ち、ITチームが社内のサポート業務に終始する状況も散見される。リモート環境上に安全性と業務効率の確立させるために多くのリソースを費やすことは必然ではあるが、増加する従業員から寄せられる疑問や技術課題にかかりっきりになることは、ITチームの本来の姿とは言い難い。ここに競争力にも影を落とす経営課題が潜在しているのではないだろうか。

 

本書は、社内ヘルプデスクの充実を提言するとともに、具体的な実例を交えて導入効果を解説する。今日、顧客体験やパーソナライゼーションといった外向けの取り組みは盛んに展開されており、IT戦略の一環としても広く認知されている。本書では「従業員も消費者の一人です」と断言し、顧客が期待する便利で、効率的で、さらにパーソナライズされたサービスと同様に従業員に対しても展開させる必要性を強く訴えている。76%の顧客は、メールや電話よりもセルフサービス型のサポートを好むという調査結果(Forrester社の調査)に基づき、社内でもヘルプセンターにアクセスし、セルフサービスで一般的な質問への答えを探し出せるのが理想と位置づける。さらにナレッジ一元化と統合管理を実現する具体的な施策にも言及し、ひいては生産性向上が期待される内容となっている。経営課題が顕在化する前に本書をぜひご一読いただき、早急な対処をおすすめする。