業態を問わずビジネスの基本は顧客との良好な関係構築に尽きるだろう。一昔前であれば顧客接点はリアル店舗であり、地域や立地といった制約の中での接客に重点がおかれていた。Eコマース時代 の到来は、企業とユーザーを地域の制約から解放していった。複数の顧客接点を得るマルチチャネルはあたりまえとなり、リアルとオンラインの境界線をなくし、さらに複数の接点を統合するオムニチャネルへと時代は進んでいる。

顧客一人一人の要望や嗜好に応え、さらに気付きを加味する仕組みづくりを

近年ではより効率的なビジネス展開の要点として顧客体験が重視されるようになった。読者諸氏もご承知のとおり、ECサイトのリッチコンテンツ化や顧客データベースの統合連携などテクニカルで大規模な手法が数多く市場に展開されている。規模や予算の都合もあり顧客体験の取り組みは企業事情によって異なり、ビジネスに直結する項目だけに手法や選択は非常に悩ましい。

自社の思いを正しく顧客に伝えるという側面もあるが、顧客一人一人の要望や嗜好に応え、良い商品やコンテンツとの出会い(セレンディピティ)を実現する仕組みが、顧客と企業の良き関係を築く要所ではないだろうか?

自社の顧客との関係を劇的に改善させたEC企業5社の事例を紹介

本書は、レコメンドエンジンの導入によってECの課題を解消させた5社の取り組みをレポートする。取り上げる5社はアパレル、ツアー商品など無形有形問わず幅広い事例となるが、いずれも顧客との関わりにビジネス課題を見出している。

消費者の心理にある「良いものに出会いたい」と「良いものを届けたい」という企業の想いを繋ぐ効果を求めるレコメンドの活用自体は以前から存在するが、「良いもの」の定義は難しい。

そのため企業の都合や最も売れているものが「良いもの」に定義されてしまう乱暴なケースも散見されるが、顧客は数値の集合体ではない。それぞれの一意性を蔑ろにすることは顧客体験とは真逆の発想だと断言する。

本書で展開されるレコメンドは、顧客の行動との関連性に則った、顧客視点での「良いもの」との出会いを迅速に提供する。企業事情の違いや、EC担当者の視点や課題が詳細に収録されており、自社の顧客との関係を考察する上でも広くご活用いただける内容となっている。