ITの進化と普及は、消費スタイルに大きな変化を起こした。そして顧客のライフスタイルに広く応えるべく、接点の増加による機会獲得を旨とするマルチチャネル戦略が配備され、顧客を軸にチャネルを意識させることなくシームレスに展開するオムニチャネルへと発展している。
一方、企業の設備投資にも変化が訪れ、クラウドの登場によって多くのインフラ設備は所有が前提となる投資から解放された。マーケティング戦略や経営判断にデータは重要な役割を担い、格納場所や容量への不安が払拭されたことからデータ活用は企業活動のあらゆる業務に取り入れられている。膨大な設備と予算はデータドリブンを実行の必須項目としない市場が確立されつつある。そのため、あらゆる業務でデータをとりあえず取得できるだけ取得するような方針を採用する組織も存在する。しかしデータはビジネスに効果が発揮されてこそ真のデータ活用といえ、不明瞭で目的に貢献しないデータ取得は業務効率化の潮流にも逆行する。ビジネスにおけるデータは、明確な目的意識と目的にリーチするプラットフォーム上で活きるものといえる。
本書は、顧客体験(CX)に特化し、データプラットフォームの種類について解説する。顧客接点は企業経営において要所となるため、顧客を軸に展開されるプラットフォームやツールは実に多い。顧客データ用途と一群で語られるケースもあるが、開発社が意図する目的は大きく異なっている。本書では、ともに顧客データを扱うDMP(Data Management Platform)とCDP(Customer Data Platform)を、取得データ種類、得られる顧客像などで比較し、活用用途の違いをわかりやすく解説している。CDPによる具体的な施策例も紹介され、自社の展開するCXの改善をイメージできる内容となっている。適材適所の有用性を理解するにとどまらず、自社のデータ活用戦略を見直す上でも、経営層を含め本書の一読を広くおすすめする。