今日のビジネスにネットワークインフラは欠かせない。ビジネスを前進させるためにITインフラの重要度は上がり、企業は技術トレンドを見極め積極的な投資を行う。いまだ事業規模や予算多寡がビジネスに優位性を育むことは否めないが、仮想化やクラウドなどの新たな技術の出現は多くの企業に競争力を提供している。ITとビジネスの関係が緊密になるほどに、テクノロジーの選択と使いこなしは企業成長の鍵となってきているだろう。

 

その反面、企業のネットワークインフラは複雑化し続けている。メンテナンス、可用性、セキュリティなど多項を漏れなく維持し続ける必要がある。セキュリティは企業活動の第一義だが、メンテナンスのたびに顧客向けのサービスが一時停止するような運用は、ビジネスの観点からも賢明とは言えない。運用は回収を伴い、IT投資における成果が最も問われる部分と言えるだろう。中長期の自社のビジネス要件を整理し、巨視的な視点に立った投資が企業成長に貢献するといえるのではないだろうか。

 

本書は、ネットワークインフラの導入事例をレポートする。紹介されるジュピターショップチャンネル株式会社は24時間365日テレビショッピングを中心に展開する大規模リセラー組織である。ライブ放送と連動した発注・問い合わせは日に7万件以上、商品発送は日に5万箱以上とエクストリームなオペレーション力がビジネスの根幹となっている。ネットワークインフラが複雑化した上での運用は、顧客サービスと社内の両面に将来性への課題を見出す。4K放送に対応したスタジオ開設を期にネットワークインフラの刷新に舵を切り、SPB(Shortest Path Bridging)プロトコルを使い、柔軟で可用性高い環境を構築する。とかくセキュリティや運用負荷など局所的で顕在化する課題対策のみが語られる傾向にあるが、本書は全域で将来的な拡張性をも重視し、シンプルさと拡張性に強みを発揮するSPBが選択され、まさに企業成長に貢献する価値あるIT投資事例といえるだろう。ネットワークインフラの刷新は大規模な作業となるが、広帯域・冗長構成を備えるシンプルなネットワーク構成は将来へのビジネスにおいても持続性を発揮することだろう。本書をご一読いただき自社ネットワークの根本から見直してみてはいかがだろうか。