ビジネスは事業計画を立て、目標に向かってロードマップを作成して取り組んでいくことを今まで定石としていた。大元の事業計画は時代の潮流を読む経営判断が求められるが、企業組織の大半を占めるメンバーの多くは計画に従い準備に励み業務を実行する。日本企業の業務はオペレーションに近い側面が多々含まれるようにも思われる。
近年は世界中で新型コロナウイルスによる混乱が続く。働き方が変化するだけでなく、企業活動の軸として年度や四半期単位で作成されていたロードマップは確信性を失ったのではないだろうか。業種を問わず、混乱と変化が合わさり短期の推測すら困難を極めるのが現状である。また顧客の状況も同様に急速に変化しており、ビジネスを停滞させないためにもロードマップでは想定されない早急な判断と対応が求められ、トップダウンの指示を待つオペレーションでは目前の商機と顧客を失うことは明白だ。データのビジネス活用の理解も浸透し実践されている今日にある。しかし経営判断や分析チームなど一部の階層のみに有用なデータが独占されてはいないだろうか? 業務に従事するメンバーすべてが必要とするデータに触れ、個人がデータに基づき、正確性と安全性に自信を持って意思決定されることこそ、あるべきデータ活用でありデータドリブンといえる。はからずもパンデミックによって地図と指示で動く組織の脆弱さが露わになってきたように思われる。
本書は、YouGov社(英国/独立系調査会社)とTableauによる企業調査に基づき、パンデミックの際に優位を発揮したデータドリブン企業のメリットを解説する。また、日本企業にも特化した調査を行い、他国と比較したデータスキルへの投資予算額比率の低さを指摘する。ビジネスリーダーの声を拾い、事例と共に日本固有の事情を深掘り、課題を整理し、データカルチャーを築く5つの要素を明確に示す。日本企業も、働き方から組織文化にいたるまで的確な戦略が要求される新時代に突入しており、今こそデータドリブン企業にシフトすべきタイミングが訪れている。本書は、企業活動の明日を示す貴重な内容となっており、すべてのビジネスパーソンにご一読を強くおすすめする。