人類がビジネスという概念を認知した時点から小売業における顧客戦略は始まった。買う/売る、需要/供給といった根幹は恒久だが、顧客エンゲージメントのかたちは時代によって絶えず変化している。実店舗での対面接客といった単一であった販売チャネルの形態も、デジタルチャネルの発展した現代においては消費者に選択肢を提供し、小売業界には把握の難しさと戦略策定の複雑さを発生させている。
新型コロナウイルスの拡散によって世界中の小売業は甚大な影響を被った。多くのブランドや小売業者はビジネスの停滞を回避すべく、新型コロナウイルス蔓延期に短期的なソリューションを導入・投下した。これによりデジタルチャネルの幅は急拡大し、一昔前であれば「EC」とひとくくりにされたデジタルチャネル領域は、これまでにないほどの多数のチャネルと選択肢を消費者が選ばなければならない状況となっている。完全終息は見えず現在もコロナ禍だが、デジタルチャネル一辺倒であった蔓延期とは異なる今日では実店舗が求心力を失ったわけではない。近年、米国を中心に台頭する「コネクテッドショッパー」と称される消費者は、オンラインで情報を集め価格など比較し実店舗に来店など、オンラインとオフラインをたやすく往来し上手く使い分けることで、自身にとって賢い選択を求めて行動している。消費者の期待はデジタルチャネルとリアルチャネルの境界なく、ブランドや小売業者に高度な対応を要求するように変化しており、コネクテッドショッパーの同心円は拡大傾向にあるといえるだろう。
本書「コネクテッドショッパー最新動向」では、高まる消費者の期待と小売業界の置かれた現状を分析、レポートする。勤務形態を含め混沌した生活を未だ余儀なくされる状況下で把握の難しいコネクテッドショッパーの実態を明らかにすべく、Salesforceは世界中の1600人の消費者と1000人以上の小売業界幹部に対して調査を実施した。4タイプの販売者(小売業、ブランド、モール型ECサイト、配送アプリ)の動向を分析し、4世代の消費者(サイレント/べビーブーム世代、X世代、ミレニアム世代、Z世代)にアンケートを実施しクロス集計することで、実店舗の役割の変化やパンデミック後の展開についても深く精緻に展開する充実の内容となっている。本書をご一読いただき、リアルチャネルを含め顧客戦略をリデザインされることをおすすめする。