組織全体でのデジタルテクノロジーの習熟は、ますます重要になってきている。社内向けの管理や顧客に向けたサービスなどへの活用は当然だが、急拡大したリモートワークに際してもデジタルの介在なくしては成立しない。業務に応じたアプリケーションを利便性と安全性を担保した上で迅速さをもって各所に届けられなければ企業活動自体が停滞してしまう。
近年、アプリケーション開発がビジネス競争力の源泉となっている。先進企業の多くは全体にも局所にも的確なアプリケーションを配すことで生産性・効率を高めており、さらに開発スピードにも長けている。大企業などに由来する潤沢なリソースがあって実現される事柄と思う読者がおられるかもしれないが、大企業すべてがアプリ開発をイノベーションに転換できているわけではない。新たなアプリケーションをリリースするにあたって、開発に伴う様々な制約が立ちはだかり、スピードを鈍化させる要因ともなっている。組織体制を含めた開発・運用の改善なくしては根本は解消されないだろう。
先進企業の多くはアプリケーション開発手法の見直しを実践しており、その多くはDevOpsに開発と運用の課題解消の活路を見出している。DevOpsは開発 (Development) と運用 (Operations)の垣根を取り去り、各プロセスをシームレスに繋ぎサイロ化を排除することでソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の短縮を目的とする。実現には組織を含めた体制の見直しに始まり、各プロセスを効率連携させるDevOpsツールチェーンの環境も整える必要がある。本書ではSalesforceを俎上に載せ、具体的なDevOps実践をガイドする。Salesforce PlatformではDevOpsを支援するツールが備わり、本書では開発サイクルを5つのステージに分類し、各ステージごとに「内容」「使用するツール」「関与する職種」「例」の項目で展開し、DevOpsの基礎理念から学べる内容となっている。顧客関係管理に留まらずあらゆる業務で広く活用されるSalesforceだけに、イノベーションによる効果は社内に広く波及し、なによりもDevOpsに重要な企業文化が育まれるのではないだろうか。ぜひご一読をおすすめする。