デジタルトランスフォーメーション(DX)推進が各所で提唱され久しい。DX推進が“企業力”の優劣を生むとも言われてきたが、テレワークやフレックスタイム制など様々な働き方が増えてきた影響からDX推進が“企業活動”の優劣をも決すると言える事態へと変容してきている。

経産省が2018年に発表したDXレポート中で警告し、DX推進の重要性を説いた「2025年の崖」とは別の崖が我々の足下に広がっている。そして今や目標や理想ではなく実行性を伴ったDX推進を企業は加速させる必要がある。企業がDXを推進しようという試みは見られるものの、実際は多くはビジネス変革につながっていないと同レポートは指摘する。また要因をレガシーシステムの保守に経営資源の多くが投入されているともいうが、より喫緊の課題となったビジネス改革をともなうDX推進では、レガシーシステムの解消は大規模になるために時間が足りない。では課題解消の力点はどこに置くべきなのだろうか?

本書は「はじめてのノーコード導入ガイド」と題し、ノーコードの基礎からツール選定の見極め・使いこなしの勘所を解説する。DX推進の重要度が増すなか、企業単位での取組に限定していささか狭義にDXが論議されているように思われる。遅々として進まないDXの現状において本書は、業務現場でのビジネス変革に注目する。業務現場にITを浸透させることがDX推進の要ではあるが、従来型のエンジニア任せのシステム・アプリでは開発スピードも遅く、機能や内容にも修正・改善が欠かせない。なぜならエンジニア自身が現場業務を理解しているわけではないので、取りまとめられる機能・性能・仕様それぞれに現場との齟齬が生じることは避けられない。本書では、業務現場の従事者自身の手で開発・運営されるノーコード開発を提言する。これによって、2004年にエリック・ストルターマン教授が提唱したとされるDXの基礎概念「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」が実現されるのではないだろうか? 火急であるほどに原点回帰が課題を解決し、現場の人の課題解消が企業にビジネス変革をもたらすといえる。ノーコードの特性から具体的なツールの比較までわかりやすく展開され、DX推進を加速させるべきすべての企業人におすすめできる内容である。