日本のビジネスが100%国内で完結することはほぼ稀だ。取引の対象が国内に限定されていても、畜産業であれば飼料、流通業であれば燃料、オフィスワークでもデバイスのCPUなどなど、深度の差違はあれども海外との関わりを完全排除してビジネスは成立しないだろう。

 

また昨今は新型コロナウイルスの世界的な猛威に加え海外紛争など、先行きが読めない状況にある。国内企業でも海外要因に左右されるため、海外情報を注視する傾向は高まっている。特に海外の売上比率の高い企業や海外拠点を展開するグローバル企業ではことさら重要だ。平時であっても日常業務で海外との関わりは深く、言語の障壁を解消する必要がある。日本語は俯瞰すればかなりニッチな言語であり、ひらがな、カタカナ、漢字、さらにはローマ字まで混在する文書は独特で、外国人には難解極まる言語といえる。そして日本人の英語読解力の平均値は高くないことから、最先端の情報を取得するにも翻訳業務が欠かせない。重要シーンでは翻訳会社に依頼するケースが多く、日常業務ではコストとスピードを重視して、翻訳ツールが広く活用されているだろう。無料有料など多種多様な翻訳ツールが提供されるが、翻訳精度の差も大きい。

 

本書は株式会社デンソーの、翻訳ツールに関する導入事例をお届けする。同社は自動車部品メーカーとして世界第2位を誇るグローバル企業であり、翻訳の重要度はきわめて高い。インタビューでは、一般的な選定ポイントとなる翻訳精度とコストの課題が展開されるが、同社は情報セキュリティも採用要件として言及する。実はクラウド型の翻訳ツールは翻訳データが二次利用される製品も多く、機密情報漏洩のリスクが潜在し、オンプレミスの翻訳ツールでは基本的な翻訳精度が劣る側面もある。同社は情報資産セキュリティとクラウドセキュリティに関する国際規格を取得するクラウド型「Mirai Translator(R)」を採用し、ファイル翻訳機能とともに業務の効率化に成功している。業種業界問わずグローバリゼーション(集中型)とセグリゲーション(分離型)との経営バランスが注目される今日、情報セキュリティにも十二分に配慮した高機能な翻訳ツールは、企業活動を強力に支援していくだろう。