企業組織の存在理由はビジネスの拡大と継続にある。そのためには今を良しとせず、多方向に施策を講じていく必要が出てくる。当然、より広く、より多くの顧客へのリーチを求めていく広告も重要な要素となる。

 

デジタル環境が広く整備されたことでマーケティングは広域で高度化し、あらゆる業種でWeb上の戦略は重要度を増している。提唱される“顧客体験”をはじめとして、データを駆使したコンバージョンへの綿密な解析と改善を推進することで、短期で直接的な売り上げに結びつくD2C企業は、とくにWeb広告領域で強みを発揮してきた。その一方で、直接の売り上げ貢献が測りにくいブランディング広告もテレビCMには多く流れ、近年ではWeb領域にも増えてきており、多くは動画での訴求手段を採っている。大手企業ならではの潤沢なマーケティング予算や株主対策などが背景にある場合もあるが、ブランディング+動画の組み合わせは費用対効果にシビアな外資企業や中堅企業にも広がっており、短期間で直接的な広告効果だけではない、有効な側面があるように思われる。

 

本書はブランディング広告に着目し、ビジネスインパクトを詳らかに解析するとともに、テレビCM・Web動画広告の有効なクリエイティブについて提言する。一般的にブランディング広告への投資優先度が下がる要因を「獲得型広告」を重視する風潮にあると指摘する。解析ツールの発展もあり短期の効果は可視化されるが、中長期での効果測定に対応するものは少ない。本書では広告効果分析ツール「MAGELLAN(マゼラン)」を用いた実績データを事例に、ブランディング広告を停止した1年後の売上損失を92%と予測。さらに効果を左右する動画広告のクリエイティブについては属人的・代理店頼みとする“感覚”ですすめる制作体制に問題を提起し、分析・評価・企画・制作をワンストップで、データに基づいて実行することを提言する。読者諸氏の企業においてもブランディング広告の効果に懐疑的であったり、展開中だが効果が見いだせないなどの不安が存在するだろう。しかし中長期の利益と効果追求の取り組みがあれば見方は変わってくるのではないだろうか? 本書をご一読いただき、視点を変えたビジネスの拡大と継続に一歩踏み出すことをおすすめしたい。