現代社会は多くのITを礎とするテクノロジーによって支えられている。社会インフラはもとより、多くのビジネスも例に漏れず、ITの存在を抜きには企業活動は成立しない。ITが正常かつ平穏に運用・動作する前提で業務は遂行され、事業計画は描かれる。

 

故にデータセキュリティは企業経営における重要項目としてランクされる。近年の世界的なパンデミックは働き方にも変化をもたらし、当初は手探りであったがリモートワークモデルへの移行も想像以上の速度で進んでいる。移行作業に奔走するIT部門、新たなルール構築に思案した管理部門も、セキュリティについて考え及んでいたと思われるが、はじめて直面する事態にリスクの想像範囲は限定されていただろう。リモートワークは移行期から運用期に推移し、読者諸氏もご承知のとおりエンドポイントセキュリティの重要性が広く知られるところとなっている。

 

元来リスクは流動的に変化し、データセキュリティは常にトレンドと現状を捉え最良の対策を選択・実行することが堅実な姿勢といえる。永続する完全無欠さはなく、固定的な思考は危険ですらある。本書「2022年データセキュリティトップトレンド」では、北米300人のITリーダーへのアンケート結果に基づきデータセキュリティのベストプラクティスを紹介する。多数の回答者は「分散した労働力を組織としてサポートしている」と答え、ハイブリッドな労働環境下においてもセキュリティとコンプライアンスの確立を目指す姿勢を示している。さらに本書は新たに生じた課題を繙き、先行して対策するセキュリティ脅威と懸念される被害、防衛施策と実行、データ復元率など4章にわたりアンケートデータと併せて分析し、今後の展望を含めトレンドをロジカルに解説する。データセキュリティは企業の重要項目だけに開示されることはなく、他社の動向は掴みづらい。本書は数値でトレンドを示す貴重な内容となっており、ITリーダーやセキュリティ部門だけでなく、経営層にも必読の一冊としておすすめする。