ITの進歩と変化は、留まることはない。ビジネス領域にITが浸透して久しく、業種業界問わずにIT基盤の進化は企業成長の大きな要素となっている。業務への中心要素が高まり、データが価値を持つほどに、IT基盤の安定性は企業活動の前提条件といえるが、同時にサイバー脅威も変化に合わせて暗躍を続けている。

近年はコロナ禍によって爆発的な速度でリモートワークが普及し、多くの企業が勤務形態の変化を受け入れている。付随して、より積極的なオンプレミス運用からクラウドにシフトするケースも多く見受けられるようになった。業務は企業のオフィスに縛られることない勤務場所の自由を得て、業務アプリはWebブラウザー上で実行できる物も増え、接続されるデバイスもiPhoneに代表されるモバイルへと広がりをみせる。当然「オフィスの中」を前提としていた組織の境界防御は意味をなさず、オフィス内外を問わずセキュリティを行き渡らせる“ゼロトラスト化”へと舵を切る組織も着実に増えている。

本書「リモートワーク時代に重要なモバイルデバイス管理とセキュリティ」では、変化著しい業務環境の実態を調査分析し、情報セキュリティの有効な対処法について提言する。今日のハイブリッドワーク全盛は、コロナ禍という切迫した状況下で実現しなければならなかった特異な事情を含んでいる。性急な物事は綻びも生じやすく、常にサイバー脅威は綻びをねらい狡猾に展開される。本書では、長年運用してきたWindows PCの観点とは異なるセキュリティ事情を数値と共に端的に指摘し、モバイルデバイス活用を進める際のリスク、デバイス本体をターゲットとしない新たな攻撃手口・脅威について解説する。また、看過できないセキュアなトラフィックの確保についても、従来型のVPNの課題にも言及している。さらにMTD（モバイル脅威対策）や次世代VPNなどの各ソリューションも具体的に紹介し、自社環境の点検のみならず、より堅牢なハイブリッド環境の実現に役立つ内容となっている。