顧客ニーズを理解し、1人ひとりにパーソナライズした体験を提供することが、ビジネスを伸ばし企業価値を高めるための至上命題になりつつある。その実現に向けては、よりリアルタイムな応答性が求められる。ネット化が進むなか、応答の遅延は大きな機会損失につながる可能性が高まっている。

 

顧客ニーズの理解に向けては、サイトへのアクセスログやスマートフォン/IoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスなどを使った大容量のデータ収集が可能になっており、その分析のためのAI(人工知能)技術の活用が進む。データの収集から分析、さらには分析結果を顧客にフィードバックするまでのプロセスにおいて、よりリアルタイム性を高めるための仕組みとして注目を集めているのがエッジコンピューティングだ。

 

すべてのデータをクラウドにアップロードする前に、顧客やデバイスにより近いネットワークのエッジ側に処理を分散をする。そこにAIモデルを動作させれば、よりパーソナライズした顧客体験を、よりリアルタイムに提供できることから、新しい顧客体験(CX:Customer Experience)やサービスを開発するための環境としての関心が高まっている。

 

本書では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する中で注目を集めるエッジコンピューティングについて、その理解を深めるための基礎から先行事例、コンテンツを高速配信するCDN(Content Delivery Network)を活用したエッジコンピューティング環境のメリットなどを解説をしている。

 

まだ先進的な技術/環境であるエッジコンピューティングだが、市場に広がり始めた5G(次世代移動体通信)/ローカル5Gといった高速な通信環境やIoTデバイスなどと組み合わせることで、現場のリアルタイムなセンシングを実現する。その導入・運用に向けては、エッジ環境およびデバイスのセキュリティの確保や、エッジ環境を管理できる人材の育成なども必要になる。

 

本書からエッジコンピューティングの仕組みを理解し、そのメリットを最大限に生かすことで、新たな顧客体験を提供するサービス構築の一助にしていただきたい。