データが企業競争力の重要要素であり、経営資源であることは広く認知されている。資源である所以は、ただ単に所有するだけでは価値が発揮されないことをも意味している。多くの企業があらゆるデータを収集し、ビジネスやその先の利益に結びつける戦略にシフトする昨今にあるが、読書諸氏の企業ではデータから価値を引き出せているだろうか?

 

エンタープライズデータの最大化、最適化、精緻化の実現がキーワードとなるが、増大するデータ量と高まるビジネスのスピード要求に応え、セキュリティリスクの回避やコストバランスにも優れるのは極めて難しい。かつて巨大なデータ量を扱うにはオンプレミスが前提になっていたが、クラウドの登場はあらゆる企業に安価なデータ利用の道を拓いた。しかし、いくら備蓄があっても原油で作動するインフラは存在せず精製を要するのと同様に、データにおいてもそのままでビジネス価値が創出されることはない。機械学習(ML)、人工知能(AI)、データサイエンスに対応してこそデータは価値を放つが、保存場所も分散だけでなく、構造化・半構造化・非構造化のあらゆるデータの混在が進む今日の状況ではデータの保存と分析は一筋縄ではいかない。

 

本書「データウェアハウスからデータレイクハウスへの移行」は理解が深まる参考書として世界中で支持を受ける「For Dummies」シリーズの特別版である。データの課題に対し、データレイクハウスに移行する企業が増えており、ビジネスに直結する事柄だけにメリットもあることが伺えるが、そもそもデータレイクハウスとは何者? という疑問に応え、解りやすく解説する。全6章で展開される本書では、エンタープライズデータウェアハウス(EDW)、データレイクれぞれの概念に端を発し、複雑なプラットフォームやセキュリティ管理への課題を呈す。企業が求めるデータによるビジネス課題解決への集中にはデータ保存と分析の一元化された場所の必要性がある。最適解としてシンプル、オープン、マルチクラウドに応じる「データレイクハウス」のメリットと移行へのポイントを幅広く展開する。1つのデータは原油とは違い、的確な管理と迅速な分析によって幾度もビジネス価値を引き出す事ができる。本書は、競争力の維持を目指す経営層、既存のデータ活用に疑問を抱くITリーダーへの必読書として推奨できる内容となっている。