企業によってビジネス目的は様々だが、共通する究極の目的は“利益”を出すことと“継続”することではないだろうか。商材となる製品やサービスの市場競争力維持向上はもとより、組織だった宣伝、営業などの様々な“売る”ための活動と戦略が企業体を成立させる。

 

しかし単に企業側の論理を市場に投げ続けるだけでは“利益”は生まれず、売り先である顧客に商材を届けるだけも“継続”はなされない。プリセールス/アフターセールスを通して顧客の疑問や問い合わせに応えていくことで究極の目的への道は補完される。故に顧客満足度の向上にはカスタマーサポート部門の役割は特に大きい。企業活動の多くは組織だったものだが、カスタマーサポートにおいては必ずしもそうとは言い切れず、迅速かつ的確に顧客の課題を解決することが求められものの、寄せられる多種多様な課題レベルすべてに対する実現は難しく、多くの企業が抱えている課題と言えるだろう。

 

本書「Salesforceのすべてを使いこなすコツ~第1回 初回回答率だけではもう古い!KPIを多角的に評価~」では、サポートサービスにおける組織運営の方法論について解説する。顧客は問い合わせの対応・回答を企業の総意と捉えるが、現場の担当者は個として対応しなければならないケースが多く、企業への評価が個人の双肩にのしかかるアンバランスな状況が見られる。階層構造の組織は、個で対処しきれない課題は上の階層に回され、いわゆる“たらい回し”状態に陥ることもしばしばだ。煩雑な顧客対応フローを解消すべく、本書では組織論「スウォーミングモデル」を提唱する。直訳すれば「群れる」ことを意味し、より多くの人が課題に関わることで的確さと顧客の時間浪費を解消に貢献する。実践にはヒト・プロセス・テクノロジーの3要素が定義され、具体的なイメージや効果が展開される内容となっている。ソフトウェア開発では様々な手法が論議され進化してきた。サポートサービスにおいても属人化を排し、クオリティ向上と迅速さへと進むタイミングが訪れている。

 

組織運営の方法論を解説する中で本書はSalesforceのサポート部門のKPI(指標)設定とその項目に沿った状況把握による顧客へのサポートケース、運用と管理方法についても具体的に紹介している。実際にSalesforceでは以下のようなKPIを定義・設定し、それを継続的に計測・可視化することでカスタマーサポートの質の改善につなげている。
「お客様満足度」「お客様の体験満足度」「生産性」「問題解決時間」「エスカレーション数」「他者ヘルプ件数」「ナレッジリフレッシュ件数」など全13項目
KPIの見える化により改善のポイントが明確になり、次へのアクションを加速することができる。

 

顧客との良好な関係を継続的に構築し、ビジネスをサブスクリプション型へと発展させるためにも本書をご一読いただき、新機軸への一歩を踏み出すことをおすすめする。