ビジネスにおけるITは、企業の競争力に大いに関わる項目となっている。潤沢な予算を投入できる大企業や業種的にデジタル領域を多く含む企業は投資の幅も多く、技術の歩調に合わせて効率化や基盤強化が刷新されてきた。ある意味、企業規模と業種特性がIT強化の尺度であったとも言える。

 

しかしIT分野の技術進歩は速くて一定箇所に留まることもなく、一度強化したIT基盤が宝石のように永遠に価値や競争力を発揮し続けることはない。そして市場の拡大と迅速な技術進歩は低価格化を実現するだけでなく、クラウドによる“所有”から“活用”という新たな門戸を開いている。もはや今日では、企業規模や業種特性で諦めることなくIT強化の潮流を掴むことが可能となっている。特にクラウドの活用はあらゆる方向でビジネスに活力を与えてくれる。予算のハードルは下がり、ITにおける進化・強化の機会を得やすい状況といえるが、運用に課題を抱える企業組織も散見される。

 

本書「5分でわかるAWS WAF」では運用の大前提となるセキュリティにスポットを当て、技術進化の速度以上に悪質化するサイバー攻撃、噴出する脆弱性に抗う手立てと運用課題について言及する。AWS(Amazon Web Service)が提供しているAWS WAFの役割や有効性、その運用課題について基礎知識から解説を展開し、さらに運用の課題となるセキュリティ維持への工数肥大を指摘する。前述の通り、活用への門戸は開かれているものの、自社の環境にあわせたIT強化の実践するのは容易ではなく、セキュリティの専門チームを有するなどナレッジと潤沢な人的リソースのある大企業が優位となってしまう。その点についても本書では、企業規模を問わず運用工数低減とセキュリティ両立する提案がなされている。IT強化に先進性は重要だが、必ずしも企業競争力に結びつくわけではない。運用における持続性があってこそ、生産性も企業力強化も実現されていくと思われる。企業成長を望むならば、本書の内容を是非とも押さえておいていただきたい。