近年各所でデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が説かれている。用例として“企業DX”が馴染み深いが、いま一度DXの原初の定義を訪ねれば“情報技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること”とある。

 

確かに企業DXは企業を発展させ、従業員を筆頭に関わる人々を良い方向に変化させるだろう。しかしDXを自社企業ビジネスの発展に限定して捉えれば“人々の生活“と“あらゆる方向”に対していささか狭いものとなってしまう。読者諸氏の多くはデジタルに可能性を見いだしている方々と思われる。DXへの視野を広く保つことはご自身のビジネスにも、生活にも、ますます重要となってくるのではないだろうか?

 

本書「デジタルツインで変わる建築・まちづくり」は、「デジタルツイン」に着目し、建築・都市計画におけるデジタルテクノロジーの今をお届けする。デジタルツインは、現実の“物理的な世界”と、その対をなす“仮想的な世界”をデジタル空間に構築し、両者を融合することで相互に最適化を図る思想だが、主に製造業で設計や開発領域で発展してきた。本書では、建築・都市計画における設計から建設過程にも広がるデジタルテクノロジーの背景・技術・活用について解説する。「BIM(Building Information Modelling)」の共有・流通モデル、環境課題をも考慮した3Dプリント、道路やインフラへの要素技術など、まさに進行する“DX”が示される内容となっている。街に人々が住み、生活が営まれ、生活の中にビジネスがあり、デジタルの技術も領域も一箇所に留まることはない。業界を問わず是非ご一読を頂きたい。