現代企業は、データがビジネスの躍進に関わることを理解している。随所で見られる“データドリブン(データ駆動)”にまつわる記事などは、企業により積極的なデータ活用を促すとともに経営とデータの重要性を提唱し、ビジネスの新たな潮流を象徴しているといえる。

 

データドリブンは、ひとつの計算によって生成されるデータがつぎの計算を起動し、つぎつぎに一連の計算が実行されることにある。要求に基づいて実行される“要求ドリブン”とは大きく異なり、連続的で“気づき”を与えてくれるものでなければならず、故に意思決定の素早さと適確さが紐付いてくる。しかしテクノロジーの浸透した今日の企業が対峙するシステムやサービスは多く、複雑であり分散もしている。また一言で経営判断や意思決定といっても、セキュリティ、顧客サービス、業務効率など枚挙に暇がないほどに他項にわたっている。局所的にデータ活用を実践していても、つまるところデータではなく“要求”が起点となり属人的な努力によって補完を試みるも、もはや人力で気づけるほど容易ではない。

 

データの重要性に気づき投資を実践していても企業の収益に結びつかない要因は、データに触れているだけでデータに基づいていないことにある。本書「ビジネスオブザーバビリティを実現するための6つのステップ」は、経済的利益を念頭にデータと企業組織のあるべき姿について解説する。“オブザーバビリティ”は従来システムなどに用いられる“監視”とは異なり、日本語では「可観測性」となる。随所から収集されたあらゆるデータやログ(テレメトリーデータ)は兆候と結果であり、それだけでは未来である企業の収益性は見えてこない。そこにはビジネス分析がなくてはならず、本書内で展開される“ビジネス+オブザーバビリティ”はテクノロジーと資本の間のリアルタイムでの相互作用を把握し、測定、管理する技術となる。データ活用は局所的、断片的であってはならず、本書をご一読いただき、ビジネスオブザーバビリティへの造詣を深めデータと収益について今一度思索されてはいかがだろうか。