近年の急速な技術革新とグローバル競争の激化により、あらゆる企業は組織全体で多くの対応と変革が求められている。その他にも、業界固有のトレンドや地域、企業事情などを含む潮流を見極めていく必要もある。絶対的な成功の法則があるはずはなく、こうした時代においては、現場の生産性を向上させるだけでなく、経営層がデジタル時代の変化を適確に捉える見識と行動が問われる。

 

多方に広がる技術革新は実に多種多様であるが、いずれも“データ活用”が必ず介在しているといえるだろう。当然データ取得が起点となり、業態によってはどこからデータ取得・データ化するのかに悩むこともあるかもしれないが、製造業においてデータ活用の歴史は工業化の進展や技術革新と密接に結びついてきた。そもそも作業時間や生産量などのデータを帳簿や手書きの記録で管理は行われており、他業に先駆けオートメーション化も早く、SQC(統計的品質管理)も実践されてきた。時代が進みIoTが登場するとセンサーを通じて、機械や製品からリアルタイムで精緻なデータが収集される。いうなれば製造業は常にデータにあふれており、データとの対峙が業務の中核となっている。

 

本書「製造業向けガイド インテリジェントなインサイトとアクションをデータから引き出す方法」はSalesforceが製造業に特化して、製造現場と経営の双方に価値をもたらす最新のアプローチについて解説する。前述の通り、データ量が豊富な製造業だが近年は工場から物流ネットワークまで膨大な量のデータが生成されており、本書では「データが爆発的に増える業界」と表現され増加の一途をたどるとされている。また、量ばかりでなくレガシーシステムの存在も多く、製造業者が使用しているシステムの数はERPだけでも30種以上にのぼり、外部のサードパーティのデータレイクの増加も指摘する。量と複雑さの増大を抱える状況下でのデータ活用の一手として、本書は“データ統合プラットフォーム”の有効性を強調し、プラットフォームを最大活用していくための5つのステップを調査データとともに提言する。