企業のデジタル変革は留まることなく次のステージへと進んでいる。これまでは単純な自動化や情報の可視化にとどまっていたAI活用は、自律的に行動できるAIエージェントの登場によって劇的に進化しつつある。顧客対応や営業支援、業務効率化において、AIが人間の代替ではなく、新たな組織メンバーとして価値を発揮する時代がすでに始まっている。ビジネスリーダーやITリーダーが、この潮流を見逃すことは企業競争力の低下と同義であるといえるだろう。
マッキンゼーの調査によれば、AIの価値の75%は、顧客接点を中心とするフロントオフィスが生み出すとされる。さらに平均的な企業の現場では、900種類を越えるアプリケーションを使用しており、そのうちの七割以上が接続されていない。この分断は、AIエージェントの活用を妨げる大きな要因となっている。しかしガバナンスやセキュリティを担保しないままに安易にAIを導入すれば、データ漏えいや誤動作といった新たな重大なリスクを抱えることとなってしまう。企業がリスクを避けるのは当然であるが、打開策が見いだせないために停滞し“AIを導入したものの期待した効果が出ていない”状態に陥る危険がある。
本書「MuleSoft for Agentforce~スマートなAIエージェントを迅速に構築するためのツール~」では、前出の“AI導入と効果”の課題を克服するAIエージェント構築の全貌を解説する。「接続」「安全」「アクション」という3つの要素を軸に、分断されたシステムを統合し、セキュアなAPIガバナンスを確保しつつ、自律的に業務を遂行できるAIエージェントを設計する方法を紹介する。加えて、サービス、営業、eコマースなど具体的なユースケースを通じて、AIエージェントがどのように顧客体験を革新し、従業員をより価値の高い業務へ解放するかを示す充実した内容となっている。今日、AIを中心とする企業のデジタルへの投資はますます増大している。本書をご一読いただき、経営層は投資効果を最大化する戦略を、ITリーダーは実装可能な技術的実践へと、次世代のAI活用の真価を享受する道を拓いていただきたい。