業種業界を問わず、今日の企業が成長戦略を進める上で。IT活用は欠かせない。業務メールに始まり、多種多様なツールを活用し企業競争力と生産性を高める取り組みを行っていることであろう。特にクラウドの活用は大きなトピックでもあり、複数のSaaS(Software as a Service)を使用するケースも多くなっている。さらに「働き方改革」などへの対応も活性化し、社員にモバイルデバイスを支給し、テレワークやリモートオフィスを採用する「働き方の多様性」を採る企業も増加している。

しかし社内環境であれば、マシンは社内の徹底管理された通信環境配下で利用されるが、モバイルデバイスに至っては、社外で接続される通信品質や社員の使い方など、管理されずに運用されているケースも散見される。「場所」「時間」の制約なく、業務を推進できるということは、社内の重要データが同じく制約を受けることなく、管理の手薄なままに不特定多数の危機にさらされていることを忘れてはならない。

本書は、クラウド&モバイル時代のセキュリティ対策として注目されるCASB(Cloud Access Security Broker)について解説する。CASBはクラウドアプリケーション活用に特化してセキュリティ脅威から「企業価値」を守る役割を担う。単なるフィルタリングとは異なり、大別すると「可視化/コンプライアンス/データセキュリティ/防御」の4項の役割を果たす。外部からの“悪意”だけでなく、社員不祥事など内向きの“間違い”や、誤操作による情報流出など、企業が守るべき財産・価値にまつわるリスクを限りなく低減させてくれる。労働多様性の対応を急遽に求めたり、生産性や利便性のみを安易に追求すると、最も大切な安全と企業価値の管理を忘れがちでもある。本書をご一読いただき、足元をしっかり固め、生産性向上を推進してみてはいかがだろうか。