業種業界を問わず、IT活用の重要性は常に語られている。デジタルトランスフォーメーション(以下:DX)が提唱され、企業のビジネスを発展・継続の柱と位置づけられている。読者諸氏の企業でも、日々さまざまな取り組みや改善プロジェクトを推進していることだろう。
プロジェクトの推進にあたっては、既存のITインフラの見直しや、システムに対して使い勝手、部署の要望、管理手法、運用・管理コスト、などの調査を経て、社内要件を取りまとめ、要件に適応するサービスやテクノロジーを市場から探し、予算獲得と比較検討を経てプロジェクトが始まるというプロセスが多いのではなかろうか? プロジェクトが完結して実際に刷新されるまでに多くの時間を費やしている。現状把握を基軸にして足りないものを探し、改善を積み重ねる「たし算改善」手法といえなくもない。「たし算改善」は調査時のネガティブ要素を埋める確実性は担保されるだろうが、時間を多くとるためプロジェクトが完結した時点で、すでに技術トレンドから外れたエコシステムが構築されてしまうケースも現に存在する。
本書は、「新世代が導くITインフラの進化のベクトル」と題し、注目のサービス/テクノロジーの特長・機能を解説する。「AI」「データセントリック」などは広義の技術トレンドとしてよく耳にするが、ITインフラに特化して各社の研究開発や指針を本書では解説・紹介する。現時点ではサービスとして提供されていないものや導入費用が高額になるハードウェアなども数多く収録されており、現時点で自社のIT活用に即時に導入できるわけではないが、「世界はこのように動いているが、今、自社に何が足りていないのか?」というように最新技術を捉えて自社との“差分洗い出し”を一つの起点とした未来志向の「ひき算」的なIT戦略にも役立つ。「ひき算改善」は時間を圧縮するだけでなく、潜在的なネガティブ要素をも洗い出しつつ時代性に則し、さらにその先をも見越したエコシステムの構築につながるのではないだろうか。本書をご一読いただき、先端技術が日進月歩に進んでいることを実感するだけでなく、企業力を高める契機としてもぜひご活用いただきたい。