ビジネスがあれば、顧客と企業(売り主)が存在する。かつては多くの企業において利潤追求が優先され、企業間の競争激化により消費者の存在は蔑ろにされていた。

しかし時代は進み、消費者ニーズの多様化が台頭してきた。さらに、インターネットやスマートデバイスの普及により、情報の非対称性は解消され、買い手優位の世の中となった。企業間の競争原理は、商品やサービスそのものだけでなく、消費者と企業とのコミュニケーションの良し悪しに移っている。ビジネスの成長のためには「顧客の声」に耳を傾け、製品やサービスの品質向上に生かすべきだとしたVOC(顧客の声)経営が始まり、現在ではカスタマー・エクスペリエンス(CX)の重要性が各所で提唱されている。読者諸氏の企業でも日々取り組んでいることだろう。しかしコールセンターの充実やCRMツールの導入をもってしても安穏とはしてはいられない。各業界の先頭を走る企業は、顧客からの不満・苦情とロイヤリティの相関関係を計量化した「グッドマンの法則」に注目し、ひいては企業収益向上に結びつけるべく大局観をもってCXの向上に取り組んでいる。

本書は、「グッドマンの法則」の生みの親であるジョン・A・グッドマン氏が提唱する「カスタマー・エクスペリエンス3.0」を、本人の著述にて解説する。顧客から企業に苦情が寄せられないことは一見良いことのように思われるが、実は顧客の離反に起因する営業利益損失リスクであることを本書は指摘する。ぜひ本書をご一読いただき、CXへの理解・認識を秀逸なツールとともにバージョンアップしてみてはいかがだろうか。経営層のみならず全ビジネスパーソンにおすすめできる内容となっている。