ビジネスを展開する上で情報発信は欠かせず、たとえ優れた技術や商材を提供できる企業力を保有していたとしても、ターゲット顧客の目に触れる機会がなければビジネスは成立しない。事業規模やBtoC・BtoB問わず“看板”は必要であり、“看板”は掲載場所に「広く多く」掲げるだけでなく、適切な情報提供も必須である。
読者諸氏の企業においても、Webサイトの整備・充実のみならず、ペイド広告、SEO、SNSの活用を積極的に実施していることだろう。しかし情報発信には企業側でコントロールしきれないリスクが潜在することを忘れてはならない。リスクは多種多様であって、製造事故、各種不祥事、生産物やサービスへの低評価、不適切発言などなど枚挙に暇がない。発信側と受け手側の思惑・心理のギャップは起こりがちではあるが、デマや不当なネガによる「純粋な悪意」のリスクもある。悪いことに「悪意」は広める術に長けており、火種は瞬く間に拡散する傾向が強い。
本書は、現代の企業が抱えるWebリスクの構造と対策について解説する。一時代前と比較すると各種SNS等の持つ影響力は増大し、今日では多くのマスメディアの情報ソースになってることからも、情報発信のメインストリームであるといえる。仮にSNS上で“くすぶっている”自社の状況を見逃せば、Webを踏み台にマスメディアに伝播した大炎上となりかねない。自社発信の情報であれば削除すればよいと思うかもしれないが、ユーザーによるスクリーンキャプチャー拡散なども存在するので、一度発信された情報は「不可逆的」要素も強い。発信もしくは拡散してしまった情報だけでなく、悪意においても対応を誤れば、ビジネスダメージは企業の存亡にも関わる。本書は、予測の範囲を大きく超えるリスクが内在していることに警鐘を鳴らすとともに、適切な対応と日頃の対策を示教する。リアルからデジタルへのシフトはさらに強まっており、Webリスクに強くなることは、事業継続性の強い企業へと繋がっていくことでもあるので、ぜひご一読をおすすめする。