新型コロナウイルスの脅威下において、生活様式はもとよりあらゆるビジネスも影響を受けている。経済動向は低迷が継続するL字型と宣布されるとおり、ビジネスにおいても予断を許さぬ状況下にあることに変わりはない。
一方で海外に視野を広げれば都市ロックダウンなども再実施され、脅威状況は日本国内よりも切迫しているが、株価も含め多くの国で経済状況はK字型回復にあるといわれる。右肩上がりと右肩下がりの二極化した極端な経済状況ではあるが、上を向く動きがみとめられるのは確かだ。世界でのデジタルコマースの売上は20%の上昇を記録し、テクノロジー、インフラ、ロジスティクス、高速接続ネットワークの環境が整っているブランドが特に好調に転じている。将来を見据え各所でwithコロナやネクストノーマルが提唱されているが、世界はデジタルファーストにシフトしていくことは確実ではないだろうか? 企業にとって維持継続は経営の核であるが、同じことを変わらずに続けることに意義があるのではなく、必ず成長を目指すことは、あらゆる状況においても変わることはない。賢明な読者諸氏においてはL字よりもK字が成長の可能性を秘めていることにお気づきだろう。しかし世界の市場に活路を見出し打って出るには野心と行動力だけでは充分とはいえず、現況を鑑みるならば戦略の作成はより綿密かつ的確であるべきである。
本書は、業種業界を問わず世界展開の企業をサポートするSalesforceの経験を基にグローバル戦略を立てる上での手順について解説する。すでに国内を対象としたデジタルコマースを展開する企業であれば各種の翻訳と流通の確保で容易に転用展開が可能と考えるかもしれないが、現実は容易ではない。本書は目的と対象国の絞り込みや政治経済・国民性の理解に始まり、展開国での法令と納税など継続性をも見据えた多岐のポイントを事例とデータを掲げ、ていねいに解説されている。ぜひご一読いただきたい。